Comic The Best ['97 Comer]



よくある、今年の作品ベスト10みたいのは、
面白い作品が多すぎて、とても絞り切れないから。
だから、新たに出会った人を、
これから注目すべき人を紹介してみた。

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97年に出会った漫画家ベスト5 先頭へ

■■1位 南Q太
出会ったのは、もしかしたら去年の末だったかもしれない。
最初に出た「日曜日なんて大嫌い」の生々しい描写が印象深くって。
生活感とかセリフとかの実体感とか、妙に生っぽい肉体関係とか、
そんな切れ味鋭いセンスに驚かされたのです。

雑誌掲載時のアンケートがかなり悪かったって書いてあるけど、
確かにヤングジャンプの読者にこれは理解出来ないかもね。
だって、この人はどーみても女性向きだし。いわゆる少女マンガじゃなくて、
安野モヨコ、やまだないと、岡崎京子、桜沢エリカさんとかと同タイプの
新型女性(向け)マンガって感じだから。

ちなみに、この人の作品はある意味とてもHマンガです。
Hマンガ=オカズメディアだと思ってると違うけど、
HマンガとはLove&Sexだと思ってる人には、まさにこれでしょう。

■■2位 秋葉凪樹
この人の初コミックは今年じゃないんだけど、今年はじめて読みました。
「きらきら」はまーまー良くできてるな、ぐらいにしか思わなかったんだけど、
「空のイノセント」は凄すぎる。この心理描写は恐いぐらい。
男性誌系で今年の一番といったら、間違いなくこれでしょう。

それにしてもHマンガにこーゆーレベルの作品が出てくるとは衝撃的。
男性誌系でここまで心理描写や哲学的なアプローチをした作品も初めて
見たような気がするし。まー、スタイル的にはかなり少女誌系だけど。

ちなみに「空のイノセント」は思いっきりエヴァです(笑)。
ここまで徹底してれば何も言うまい。

■■3位 OKAMA
快楽天でデビューして間がない人で、まだコミックスは出てません。
偶然買った快楽天で出会って、その後この人の作品を読みたいがために
毎月快楽天を買ってます。マンガ雑誌を定期購読するのなんて初めて。

いきなりHマンガにこーゆー人がデビューしてしまうなんて
時代の流れを痛感してしまう。白と黒のコントラストとか、
繊細だけど大胆なタッチとか、アート感覚あふれるレイアウトとか、
とにかく抜群に上手いです。その上、ストーリーのセンスも抜群。

ちなみにこの人の作品はある意味、H付きの少女マンガです。
全編に強烈な女のナルシズムを感じるから。
こーゆー作品がこの手の雑誌に来てしまうのは、それ系の女性向けの
雑誌がないからなのかも。快楽天の読者の半分弱は女性らしいけど。

そーそー「120Wのぬくもり」はかなりエヴァかもしれない。

■■4位 三原ミツカズ
フィールヤングが発掘したこれまた強力な新人です。
デビュー作が「ゴムのいらない子供たち」だったりするとこなんか、
まさに恐るべし、と言った感じでしょうか。ストーリーも絵も。
ちなみに、ゴムとはコンドームのことです。

スタイルが凄く時代を捉えてたり、妙に肉体の希薄な感覚とか、
価値観の不安定さとか、まさに今を鮮やかに描いてるのです。
それにしても、いきなりこんな腕前の新人が出てくるトコロが
マンガの世界のすそ野の広さなのでしょうか。

考えてみたら、このリストの中で純粋に少女マンガと言えるのは
これしかないような。でもこの人のスタイルもかなり新型なのでした。
ただカワイイだけの少女マンガの時代はもー終わったのかもしれない。

■■5位 遠野麻樹(麻紀)
エンジェリック・インパクト、天使的衝撃のまさに張本人。
あくまでも同人誌の再録なので、オリジナル作品の評価ではないんだけど、
こーゆーレベルの作品を見てしまうと、期待せずにはいられないです。

一枚、一枚の絵やコトバが重いのです。無駄なシーンがないと言うか。
同人って上手い人でも一人よがりに陥りやすいから、バランス感覚に
欠けてる部分が多々あったり、消化不良になり易かったりするんだけど、
この人は天性のバランス感覚を持ち合わせてると言えるかも。

当たり前だけど、もちろんエヴァです。
この人の描くレイは、オリジナルよりいいかも。かなりスキ。
現在「eyes」「Dear+」という雑誌で描いてるようです。

■■次点
石田拓実、鶴田謙二、のぞみ侑海、大暮維人、咲香里、帆場瑛明

他に強く印象に残った人はこんなところです。
うち三人は初コミックスで、一人はまだコミックが出てません。

■■総括
今年はまさにエヴァとHマンガの年でした(爆)。
エヴァに関してはあらためて語る必要もないような気がするけど、
Hマンガに関しては、特に認識を改めさせられた一年でした。

今までは、Hマンガ=二線級の人たちが描いてるしょーもないマンガ、
ってイメージが強く有って、半ば諦めていた部分も有ったのです。
けど実力のある人が目立ってきたというか、ひとつの表現の舞台として
認められたというか。まともな読める作品がずいぶん増えました。
未だに女のカタチをしたハリボテの人形みたいのが出てくる作品も
いっぱいありますが、少なくとも全部ハズレみたいな状況では無いです。

考えてみたら、Hマンガはちゃんと人間を描かなくてはいけないから、
普通の少年マンガよりも、心理学とか哲学のようなアプローチで
新たな表現の可能性を追求するような作品が生まれ易いのかもしれない。
それに、女性誌の資質を持った新たな血の流入で活性化してきてるし。
1998年はどんな作品に出会えるのか、今から楽しみな分野です。

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