Anime EVANGELION [People]



何がここまで惹きつけるのか。
何がここまで狂わせるのか。
他人が何を思っているかは知らない、
私自身にとってエヴァとは何なのか。
そんなことを書き記してみた。
エヴァ ■△■


エヴァの人間描写 先頭へ

セリフ。人のコトバ。
例えば、お互いがなんて呼び合うのか。そんなコト。
そんな中に、いろんな人間関係が見える。

レイとアスカの関係の場合。
この二人は、お互いを全く名前で呼び合わない。
レイは別としても、アスカが相手の名前を覚えてないとは考えにくい。
なのにレイに話しかける時は「優等生」「あんた」と呼んでいる。
これと相手に直接は言わない「ファースト」「あの女」「あんな女」だけ。
もしかすると……いや、もしかしなくても露骨に嫌ってるんでは?

レイの方はそもそも相手を名前で呼ぶことの方が珍しい。
下手すると名前を覚えてないのかもしれない……十分ありうる話。
恐ろしく他人に対しての(自分に対しても)執着が薄いから。

だからこそ、あのエレベーターのシーンでは、アスカは露骨にやな顔をして、
決して自分からは声を掛けなかった。ビデオを見なおせばわかるだろうけど
アスカは黙ってる方が珍しい。頼まなくても(?)喋りまくってるし。
レイが話しかけるまでのエレベーターの音だけが響く静寂は、見ていて
えらく心臓に悪かった。どこまで耐えられるのか試されてた気がする。
まさか、レイの方から話しかけるとは思わなかったけど。ホント雪降りそう。
でも、レイが人形から人間になっていく、そんな過程の1シーンでもある。


レイとシンジの関係の場合。
「碇くん」「綾波」こんな文字だけだと、かなり距離が有りそうな呼び方。
シンジとアスカがお互いに「アスカ」「バカシンジ」と名前で呼び合う。
それどころか親しい間柄じゃないと絶対付けられない「バカ」まで付ける
そんな関係に比べると、名字で呼び合い「くん」まで付いてる呼び方。
でも、ホントは最も恋愛に近い関係。人との付き合いかたに不器用な
二人だからこそ、こんな呼び方が「らしい」のかもしれない。

そんな二人も最初は全くの他人だった。
シンジにとっては第一印象があれ(包帯グルグル巻き)だから、意識しないのは
無理だろうな。少なくともレイにとっては、その他大勢の一人だったのだろう。

レイは他人に対して執着があまりにも薄い。意識してやっているかは別に
しても、あそこまでそっけない対応をされたら、まともな感覚の持ち主なら、
冷たい拒絶と受け止めても不思議はないのに。あの状態で「どいてくれる」
とか言われたら……頭の中を「人間失格」という言葉がグルグル回ってた。
でも、人付き合いが不器用なシンジはそのあたりがニブくて、だからこそ
レイのテリトリーにずけずけと入っていってしまった。

それが、レイを変えていく。自分に対しても他人に対しても執着の薄い、
自分の意志を持たない、まるで道具のような、人形のような存在から、
他人との距離の中に自分のカタチを求めていく、意志のある人間に。
まさに、レイにとってシンジの存在は必然で、取り替えがきかない存在。
「あの人」ではなく、シンジが。だからこそ、これは恋愛に最も近い関係。

碇司令、赤木博士、葛城三佐(一尉)。レイがエヴァに乗るためだけに存在し、
そのために重要な他者。レイが名前を呼ぶのはそんな関係だけだったから。
「碇くん」というコトバは驚きだった。はじめて興味を持った他人。
同じエヴァのパイロットなのだから、他の人達よりは近い関係だろうけど、
なにしろ、アスカをずっと名前で呼ばなかったレイだから。

驚きはそれだけで終わらなかった。レイとシンジのエレベーターのシーン。
多くは「お母さんって感じがした」の方に気を取られがちだけど。その前の
「それが聞きたくて、昼から私の方を見ていたの?」というセリフ。
シンジがずっと見ていたのはいいとして(?)、レイがそれに気付いていたのは
びっくり。意識してないと、見られてることって気付かないんだから。
あのレイが他人にここまで執着するなんて、ずいぶん人間らしくなったね。

レイがシンジによって変っていったのにまず気付いたのは、シンジじゃなくて
勘のいいアスカだというのは皮肉なのか。「待って、まだあの中に碇くんが」
って言ってるのを、なんか意外なものを見てるって感じでアスカは見つめてる。
まーアスカはシンジが好きみたいだし……素直じゃないけど。だから余計に
レイが気に入らないのかもしれない。ライバルだし。


シンジとアスカの関係の場合。
一言で言ってしまえば、友達以上恋人未満。どちらかと言うと兄弟に近い関係。
恋人になる前に、それより近い関係になってしまった、そんな関係。
頭のいいアスカにしては重大な戦略ミスか?まあ、どーみてもシンジは押しに
弱そうだから、あの戦略でもあながち間違ってはいないんだけど。なにしろ、
レイがいるから……アスカの幸せには、どーしてもレイは邪魔なのか。

この二人の関係は、いつもアスカが押してシンジが受けるという関係。
はたしてシンジからアスカに対して、何らかのアクションを起こしてるのか。
そー考えると、実は何もしてない。それがアスカにはわかってるからこそ、
よけい気に入らない。だって、レイにはシンジの方から動いてるわけだし。
それをシンジは自覚してないみたいだし……

キスのシーンもそう。退屈だからなんて理由で、潔癖症のアスカが好きでも
ない人とキスするとは思えない。まさに口からでまかせ。ハッタリか。軽い
気持ちなら「恐いの?」なんてコトバで相手の逃げ道を無くしたりしない。
このコトバを聞いたら後に引けないのを知ってて、言ってる。アスカの方は
加持さんとシンジとどっちの方が好きなのだろう、キスしたらわかる?とか
考えてたのかな。そんなことは、なるようにしかならないのに……


で、結局シンジは誰が好きなのか。
カヲルくんというベタなネタは置いといて。
たぶん気持ちはレイに向いてると思う。

あれ、寝てる時にアスカにキスしようとしたじゃない、って思うかも。
でもあれ、無防備なクチビルが目の前にあるから。
全く好意を持ってないわけじゃないけど、自分から何かをする勇気はない。
そんなシンジにとっては、気持ちよりも興味が先に行ってる。
自覚はなくても、はっきりとした好意があるなら、途中でやめないから。
アスカの性格からいって知ったら怒るかな。それとも、その勇気にシンジの
こと見直すか。微妙なところ。キスしてたら、展開は変っただろうね。

結局のとこ、自覚という意味なら、シンジはだれも好きじゃない。
この位の年齢だと女の子の方が精神的に早熟で、そーゆうのを自覚してる人も
多いだろうけど。男の子の方は、恋愛という意味ではまだまだ自覚してない
場合が多い。そんなかなり微妙な年齢だから。


レイ、人間失格なところ 先頭へ

12話の「奇跡の価値は」の中にこんなシーンがある。
ミサトが今回の作戦が終わったらステーキおごってあげるから、
といった後のレイ、シンジ、アスカの一連のセリフ。

アスカ「今回はあんたも行くのよ」
レイ「私、行かない」
シンジ「どーして?」
レイ「肉、キライだから」

ここにもしシンジがいなかったら……
2つめのレイのセリフだけでコミュニケーションは終わってる。
アスカにしてみたら、せっかく誘ったのに何なのその態度は。
って感じでしょうか。だって、いきなり断ってるし。
これでは、あからさまな拒絶って受け取られるのが普通。

でも、ここにシンジがいて理由を聞いてしまう。
そこではじめて最後のセリフ。理由が明かされるわけです。
本来ならまず「肉、キライだから。私、行かない」って答えるべきで、
理由を言わずにいきなり断るのは、コミュニケーションとしては
かなり問題があるのです。レイにはそんな意志はなくても、
嫌われてるとか、拒絶されてるとか、そんな風に相手は感じるハズ。

勘のいいアスカはこのへんで気が付いたのかも。
レイの人間失格ぶりに。その存在の不自然さに。
そして、それが18話の
「あの女はシンジの1万倍ぐらい人との付き合いかたを知らない」
ってセリフにつながっていく。

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